2019年10月24日

アメリカ中西部の平原にて【ネブラスカ便りその4】

皆様こんにちは、UNL Big Bandのディレクターもしている渡邉です。

度重なる台風による災害より被害を受けられました皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
一日も早く復興がなされますことをお祈り申し上げます。

さて、今回は北米大学及び音楽学校での学内オーデションに関して、少しお話したいと思います。ここでのオーデションとは、学内にあるジャズ関連のアンサンブルやクラス参加のために受けるオーデションのことを指しますが、音楽大学入学試験のジャズ・オーデションに関しても参考になるかと思われます。

多くの音楽学部には、ビッグバンドやスモール・ジャズコンボといったアンサンブルが複数あり、学生の演奏技術に応じて、その参加が決まります。

私が15年以上前に卒業したバークリー音楽大学でも、当時は自分で選んだ曲の演奏、初見、即興演奏等が試され、楽器の自体の演奏技術を含むそれぞれの項目でLevel 1からLevel 7といった感じでレイティング(評価)されて、例えばあるビッグバンドに入るためには全ての評価項目でレイティング5以上といった基準が示されていたように記憶しています。

ここUNLでは、バークリー音大と比べてアンサンブルの数が少なく、あまり細かいレイティング・システムではありませんが、評価の高い学生から順番にUNLジャズ・オーケストラ、UNLビッグバンドにそれぞれ振り分けられます。

また、ここUNLでのオーデションは、予め配布された演奏課題の演奏と初見、そしてオプションで即興演奏の3つが課題となります。

参考までに、今年の課題となった演奏課題の例がこちらです。

Fall 19 Jazz Auditions (1)-02.jpg

演奏課題は、リズム・セクションも含めて楽器別にそれぞれ用意されていて、学生は予め練習をすることが出来ます。

私は、今回評価する側でオーデションに参加をしましたが、学生の多くは、ほぼ正しい音程、リズムで演奏することが出来ているように思われました。しかしながら、実際に自分がこれから演奏する音楽が、音を出す前から耳で聞こえていて(頭の中で鳴っていて)、強弱の変化やアーティキュレーション等も含めて正確な譜読みと適切な演奏スタイルに基づいた強い音楽的意思が感じられるような演奏は少なかったです。

また、即興演奏の課題は、BフラットメジャーのRhythm Changesでしたが、曲のフォームAABAのBセクションで現れるドミナント・セブンス・コードの4度進行の部分のコード・サウンドがきちんと聞こえてくるような演奏が出来ている学生は少なかったです。

Fall 19 Jazz Auditions (1)-11.jpg

そこで、そのための簡単なエクササイズを挙げてみました。余談ですが、このような課題作りも指導教官の仕事になりますので、かなりの時間を使って教材作成を行っています。

Easy Exercises for Jazz Improvisation-1.jpg
(余白には練習課題を元に、好きなメロディーを書き込んで下さい。
2つ目と3つ目の課題では、スケールの途中で跳躍が入っています。短7度の美しい響きをお楽しみください。)

以下の課題は、実にシンプルで4つの音からなる全音音階スケール(ホールトーン・テトラコードといいます)を、それぞれ次のコードに切り替わる度に、半音で繋げていくというものです。この全音音階スケールの4つの音はコードに対して3−9−1−b7の音ですが、この4つの音(テトラコード)をひたすら繋げていくと、12の全てのキーのドミナント・コードの演奏が可能ということになります。

以上言葉での説明は難解で面倒な感じがしてしまいますが、楽器の演奏の経験が少なからずあれば、僅かな練習で出来るようになるかと思いますので、興味のある方は先ずは手元にある楽器でゆっくりと味わいながら課題を演奏してみてください。

これからジャズの演奏を始めてみたい方、即興あるいはアドリブに興味があるけれど、どこから始めたらよいのか分からず途方に暮れている方、あるいは自宅にあるピアノが家具というか、単なる棚になっている方で自分探しの旅に出たい方は、ここから是非ジャズ演奏を始めてみてくださいね。

次回は、ゲスト講師としてUNLにきていただいたテナー・サックス奏者のジェリー・バーガンジ氏(Jerry Bergonzi)のレクチャーの様子なども、レポートしていきたいと思いますのでお楽しみに!
posted by TBAO at 13:07| Comment(0) | TBAO コンサート情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月08日

アメリカ中西部の平原にて【ネブラスカ便りその3】

皆様こんにちは、バンドリーダーの渡邉です。

10月に入って、すっかり秋らしくなってきましたリンカーンから今日もネブラスカ便りの第3回目をお届けします。

さて、北米州立大学の一つでありますここUniversity of Nebraska-LIncoln (UNL)も秋学期が始まって6週目が過ぎ、いよいよ今月末には早くも中間試験や秋の短いお休みがありますが、その前後には多くのアンサンブルのコンサートが行われます。私が指導を担当しているビッグ・バンド・アンサンブルも残り数週間ほどで今季1回目のコンサートでの演奏を予定していて、それに向けて学生たちは熱心に練習をしています。

アンサンブルのクラスの様子は、また次回詳しくお話しするとして、今回は先ずは総合大学におけるいわゆる学部や学科、音楽学部の在り方に関して簡単にご紹介いたしましょう。

学部生、大学院生を合わせて2万3千人程の学生を擁するUNLは、ネブラスカ州立大学システムの中では最も規模が大きく、最も古い大学として設立され、本年2019年は創立150周年を向かえました。

本学には、ビジネス、工学、建築、法律、農学及び自然資源といった専門分野のカレッジが全部で10あり、芸術関連学問領域のカレッジは、Hixson-Lied College of Fine and Performing Artsといいます。そのHixson-Lied Collegeの中には、美術・デザイン・美術史、ダンス、映画等メディア・アーツ・劇場そして音楽といった分野の学部及び学校があり、我がGlenn Korff School of Musicは、今年で創立125周年を迎えここ中西部では最も古い音楽学校の一つです。

また、映画及び劇場関連の学校は、テレビ司会者として活躍したUNL卒業生であるJohnny Carson氏(有名なトーク・ショーのホスト)に由来しています。

johnny_carson_sylvester_stallone_a_l.jpg
(この日のTonight Showには映画「ロッキー」に出演当時のスタローン氏がゲスト出演。)

Glenn Korff School of Musicは、学士、修士及び博士課程を提供し、多くの音楽専攻及び副専攻の学生が学んでいます。どのくらいの人数の学生がいるのか、はっきりとした数字は発表されていないようですが、恐らく音楽専攻の学生は学部生、大学院生合わせて、400人程度だと思われます。そのうち作曲専攻の学生は現在30人程となります。州立総合大学における音楽学校、音楽学部の規模としては、平均的なサイズだと思われます。

IMG_20190829_100026500.jpg

アンサンブルは、オーケストラが大小合わせて3つほど、吹奏楽のバンドが2つ、合唱団が7つ、ビック・バンド形式のジャズ・アンサンブルが2つ、そしてマーチング・バンドとペップ・バンドといわれるスポーツの応援バンド等のほか、ジャズを含む様々な室内楽のアンサンブルがあります。

全てのアンサンブルは、オーディションによって参加が認められ、それぞれのアンサンブルには専任の講師が指導にあたります。私が担当しているのは2つあるジャズ・アンサンブルの内、初心者を含むバンドの方(つまり野球でいうところのファームというか、2軍ですね)を担当しています。

先ほど、音楽専攻、および副専攻という言葉を書きましたが、バークリー音楽大学等芸術系単科大学や、コンサヴァトリーと言われる音楽学校と大きく異なる点は、音楽専攻ではない学生もアンサンブルや音楽関連の授業に参加できるということですね。つまり、例えばビジネス専攻や機械工学専攻の学生でも、オーデションを受けて参加が認められれば、音楽学部のどのアンサンブルにも参加可能なだけではなく、音楽史等のクラスでの取得単位も学位取得のための卒業単位として認められます。日本の大学で多く見られるような、いわゆるサークル課外活動としての音楽演奏団体というものは、あるのかもしれませんが、あまり一般的ではないように思われます(スポーツ同好会のようなものは盛んです)。

因みに、私がかつて(20年程前に)学んだバークリー音楽大学では、当時すでに学生数が2,500人を超え、その全ての学生が音楽専攻で、ビッグ・バンドだけで7つほどはあったように記憶しています。当時のバークリーは、私の記憶する限り良い意味で競争的で、学生は皆本当に良く練習し良く学んでいました。
(さらに良く飲んで、食べて、話して。基本お金もなく慣れない海外生活でも、お互い助け合いながらの生活は楽しいものでした。)

さて、ビッグ・バンド及びジャズ・コンボ(5−7名編成の小さなジャズ・アンサンブル)のオーデションは、楽器別に予め用意された譜面の演奏、初見及び即興演奏といった課題を演奏することがお題でした。即興演奏のパートは、リズム・チェンジ(I Got Rhythmと同じコード進行)に基づいて演奏することが求められていましたが、それらに関しての傾向と対策(?)は、また次回以降お話したいと思います。

IMG_20190905_140109221.jpg
(アンサンブルのクラスで熱血指導中。熱が入りすぎてシャツがズボンからはみ出てしまっているのに気づいていない。)
posted by TBAO at 13:59| Comment(0) | TBAO コンサート情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月21日

アメリカ中西部の平原にて【ネブラスカ便りその2】

皆様こんにちは、バンマスの渡邉です。

リンカーン、ネブラスカもここのところなぜか夏が戻ってきてしまって、連日摂氏30度越えの蒸し暑い日が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?

さて、今回は、前回に続いてネブラスカ州リンカーン市と我がUNL(ネブラスカ大学リンカーン校)に関して、簡単にご紹介していきたいと思います。私自身はボストン、ニューヨークといったアメリカ北東部にある大きな都市部に永く住んできましたが、およそ2年ほど前にアメリカ中西部のネブラスカに引っ越してきました。

ネブラスカ州は、地図で見ますとアメリカ合衆国のまさに真ん中あたり、南からテキサス州、オクラホマ州、カンザス州、ネブラスカ州と来て、さらにサウス・ダコタ州、ノース・ダコタ州が続き、このノース・ダコタ州はカナダとの国境に接しています。

アメリカ合衆国には、全部で50の州がありますが、観光地としての魅力は、なんとこのネブラスカ州が全米で50位、つまり最も観光地としての魅力の乏しい州だそうです。しかしながら、農業を中心とした産業により周囲の州と比べて経済も安定していて、物価も安く、治安も良いので、新しいビジネスを始めたり、家族を持ち子育てをするには、良い州だと言われています。

人口25万人程のリンカーン市は、オマハ市に次いでネブラスカ州第2の人口を有する街ですが、州都として政治・行政の中心であり、またネブラスカ州立大学システムの旗艦校として、学生数が2万3千人を超えるUNLがあるため、世界中から学生、研究者の集まる学園都市でもあります。

保守的なアメリカ中西部のなかでは比較的リベラルな土地で、また治安に問題が少なく、小中高等学校のLincoln Public Schoolの教育水準も高く、生活環境も良いため、私達を含む外からやってきた人々にとっても住みやすい街だと思われます。

1869年にランドグランド大学として、つまりアメリカ連邦政府が州立大学設立のために州政府に連邦所有の土地を供与することにより設立されたUNLは、農学や経営学といった分野で高い評価を得ているネブラスカ州最大の研究型大学です。また、スポーツの強豪校とも知られていて、アメリカン・フットボールや女子バレーボールでは複数回全米チャンピオンになっています。特にフットボールは1970年、1971年、1994年、1995年、1997年の5度にわたり全米チャンピオンになり、現在でもとても人気の高いスポーツの一つです(20年程前まではとても強かったですが、現在は低迷しています。云わば古豪ですね)。

IMG_20190515_131807723.jpg
1932年に完成した全米初の22階建てタワー型庁舎のネブラスカ州会議事堂が、UNL City Campusから徒歩5分位のところにあります。
大学や州群市の官庁舎は、このリンカーン市内のダウンタウン内に集中しています。

IMG_20190513_151911343.jpg
また、リンカーン市は通称Star City(星の街)と呼ばれています。現在私が住んでいるのは、3階建てのアパートの最上階で、バルコニーからの見晴らしはとても良いですが、夜になると向かいのリンカーン・サウス・ウェスト高校及びビジネス・コンプレックスの駐車場の照明が大変明るく、残念ながらあまり星はよく見えません。

ところで、私は幼稚園から高校卒業までの間、神奈川県大和市というところで過ごしました。最寄りの駅が小田急線南林間駅(みなみリンカンえき)、通った小学校は大和市立林間小学校(リン小)でした。さらに、私の娘がマサチューセッツ・ニュートン市在住時に通った小学校の名前はLincoln-Eliot Elementary School(リンカーン・エリオット小学校≒リン小)でした。

次回はいよいよUNLが誇るGlenn Korff School of Musicに関してご紹介していきますので、お楽しみに。
posted by TBAO at 07:00| Comment(0) | TBAO コンサート情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月09日

アメリカ中西部の平原にて【ネブラスカ便りその1】

皆様こんにちは。ディレクターの渡邉です。

9月に入って早くも1週間が過ぎて、ここネブラスカは、大分秋らしい気候になってきました。
今週末には、自宅から車で25分ほどの距離にある農園で桃とラズベリー狩りに家族を連れて出かけましたが、その途中に広がるネブラスカ州東部の風景は、こんな感じです。

IMG_20190907_104010842.jpg
トウモロコシと大豆が主要な農産物です。

IMG_20190907_111504822.jpg
先週は天気も良く、日差しも強かったので、真っ赤で甘酸っぱいラズベリーも沢山採れました。

さて、私が現在所属しているネブラスカ大学リンカーン校(UNL)では、長かった夏休みが8月半ば過ぎに終わり、この秋のセメスター(学期)も明日から早くも3週目に入ります。博士後期課程3年目となりましたが、過去2年間で無事にクラスやセミナーに出席して取る必修単位はすべて取り終わって、残すところあと1年、Dissertationと呼ばれるいわゆる卒業論文あるいは卒業制作の作成をすること、そしてComprehensive Exams.という試験諸々を受けてパスすること、というところまで辿り着きました。

それと同時に、この秋からはUNL Big Bandのディレクターとして学部生を中心としたビッグバンドアンサンブルの指導も担当しています。

IMG_20190809_093601391.jpg

これから少しずつですが、北米総合大学における音楽教育の現場の様子などもこちらで、お伝えしていきたいと思っています。

将来留学を目指している等アメリカの大学での生活に興味がある皆様にも、参考になるような情報をアップしていきたいと思っていますので、お楽しみに。

IMG_20190829_140037940.jpg
我がGlenn Korff School of Musicは今年が創設125周年、大学自体は今年で創設150年目を迎えました。
posted by TBAO at 13:11| Comment(0) | TBAO コンサート情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月07日

Tom Larson Group (TLG) のアルバムが、遂に発表となりました!

ピアニスト・作曲家のトム・ラーソン氏が、東京ブラスアートオーケストラの選抜メンバーと韓国在住のヴァイブラフォン奏者を迎え、東京で組織したTom Larson Group (TLG)のアルバムが、遂に発表となりました!

a2689664344_10.jpg

以下のbandcampの特設サイトにて、試聴、購入をしていただけます。

https://tomlarson.bandcamp.com/album/focus

TLGは、TBAO2019の特別ゲストとしてお迎えしたネブラスカ大学リンカーン校 (University of Nebraska-Lincoln, UNL) 芸術学部助教授のトム・ラーソン氏が、TBAOリズム・セクション・メンバーの西嶋徹氏(Bs)、二本松義史氏(Drs.)と、フロントメンとして小松雄大氏(T. Sax)、そして韓国ソウルより、この企画のために来日したクリス・ヴァーガ氏(Vib.)からなる特別編成したグループで、ジャズ専門レコーディングスタジオStudio DEDEにてレコーディング・セッションを行いました。

また、レコーディングに先立ち、6月19日東京町田市にあるジャズ・クラブINTO THE BLUEにて一夜限りの公演を行いました。

IMG_20190619_065845995.jpg

INTO THE BLUEでは、このレコーディングのために新しく書き下ろした楽曲を中心に、トム・ラーソン・オリジナルだけでプログラムされた演奏を行いましたが、精緻で密度の濃いアンサンブル、全てのプレイヤーによる高水準な即興ソロ、緊張感がありながら熱気に溢れる演奏を展開し、そして何よりもラーソン氏の美しい楽曲と端正でクリアーなピアノのタッチで、お集まりいただいた多くの聴衆の皆さんを魅了しました。

多くの初演作品の中には、INTO THE BLUEと名付けられた楽曲もあり、これはアルバムにも収録されました。

一夜明けた翌6月20日には、フレッシュな演奏感覚を維持しつつ、高いエナジー・レヴェルと高密度なソロ、アンサンブルを記録できるよう、直ちにレコーディングに入りました。

TBAOファーストCD"Antiphonemics"の制作でもお世話になったジャズ専門レコーディングスタジオStudio DEDEでは、スタジオ・オーナーの吉川昭仁氏立ち合いの元、チーフ・エンジニアのまつしたしんや氏による的確なオペレーションにより、ソロ・ピアノを含む全7曲のレコーディングを、大変早いペースで行い、およそ半日ほどで全ての楽曲を録り終えました。

IMG_20190620_042354430.jpg

そして、トム・ラーソン氏はアメリカ帰国後、ネブラスカ・リンカーンにあります自身のスタジオにて追加トラックの録音、編集、ミックス、マスターリングを行ってきましたが、いよいよアルバムが完成し発売となりました。

https://tomlarson.bandcamp.com/album/focus
posted by TBAO at 01:00| Comment(0) | TBAO コンサート情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする